割り切り掲示板

大学時代の恩師が亡くなった。
面倒見がいい教授だった。僕も随分あの人にはかわいがってもらった。家に招かれてお酒と食事をごちそうになったことも一度や二度ではない。「他の学生には内緒だよ」と貧乏だった僕のために学費を援助してくれたりもした。今の就職先も教授の口利きがあったからだ。
卒業後は実際に会う機会はなかった。いつかは援助してもらった学費を返さなきゃなと思いつつも、給料が入ったら割り切り掲示板で援助交際女子を拾っては楽しんでいる、僕はロクでもない人間だった。
教授とは年賀状のやり取りは続いていたが、ある時期からそれも無くなり、やがて訃報が届いたのである。僕に訃報を知らせてくれたのは、当時は中学生だった教授の娘さんだった。教授の家に遊びに行った時に面識があったかわいらしい女の子である。教授は奧さんを早くに亡くし、一人娘を殊更に可愛がっていたものだ。
こうして、僕は教授の葬式会場で15年ぶりくらいに娘さんと再会した。そして、そこにいたのは僕が割り切り掲示板で遊んでいた援助交際女子の一人だった。
確かにその娘と援助交際で遊んでいる時に「どこかで見たような?」と言う気持ちはあったのだ。だが、当時中学生だった彼女と、その10年後に援助交際をしている彼女は到底結びつくものではなかった。
「私はわかってたよ」
素人と割り切り
葬儀を終えた後、語りかけてきたのは彼女の方からだった。
「ああ、お父さんからお金をせびり倒して返しにも来ない、あの不義理な大学生の成れの果てだなって」
だから、そのお金を取り返してやろうと何度も僕に援助交際を持ち掛けては踏んだくっていったそうだ。教授にお金をせびっていたとはとんだ誤解ではあるが、当時、中学生だった彼女にはそう見えたのだろう。教授は気前が良くて、僕のような貧乏な学生を何人も抱えていたらしい。そのため、大学を退任した頃にはお金はほとんど残っていなかったそうだ。
復讐だったのか?と聞くと「そんなことはないよ。おかげでお父さんの入院費もまかなえたしさ」と、彼女は微笑んだ。
「お父さんが亡くなってこれからはやっと私自身の人生。ところで、お葬式でお金なくなっちゃったから、また援助してくれない?」
これからは、かつて教授が僕にしてくれたように、彼女の将来に投資しようと思っている。
割り切りの相場
わりきり掲示板

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